大学院の入試で訪れていただける方が結構増えてきたので、この記事を書いておきます。
ほとんどの方が修士課程を受験されると思うので、修士課程に絞って説明します。
大学入試と大学院入試の違い
大学院の入学試験は、大学入試と比べると大きく違います。
日本の偏差値教育を受けてきた学生の場合、この違いに疎くなる傾向があります。
まず、大学入試について説明します。
みなさんご存じのとおり、大学入試というのは、非常に平等な試験です。
どのような方でも高校さえ卒業していれば、入学試験を受けることができます。
しかも、入試で出題がされる内容は、事前に何人たりとも知らされることがありません。
他方、大学院入試はかなり異なります。
それを説明する前に、大学院という組織の仕組みについて説明しておきます。
大学院とはどのような組織なのか
理系の大学院について説明します。
大学院では、研究室(文系ではゼミにあたる)に勤務している職員がいます。
教授、准教授、助教、研究員という序列になります。
研究室によっては、研究補助員や秘書を雇っていることもあります。
それぞれの教員や職員は、独立して研究を実施しますが、力関係的に教授がトップであるため、
基本的にはその教授の研究室だと思ってください。
学生の面倒を、特に研究に関して見てくれるのは、教授をはじめとした教員達です。
医学系の研究室では、教授が2人存在する場合や、「講師」という准教授に次ぐ地位の職位がある場合もあります。
研究室に配属された学生は、学部4年で配属された学生は3年、修士課程から入学した学生は2年間をその研究室で過ごします。
理系の場合は、多くの場合、毎日研究室に通うことになります。
特に理学部や農学部などの実験系の研究室では、学生も貴重な戦力としてみなされますので、コアタイムなどが決まっている研究室もあるようです。
このような環境で、教授をはじめとした先生や先輩たちと毎日顔を合わせて、研究します。
多くの研究室では、週に1回程度研究会が実施されます。
そこでは、学生が研究報告を発表し、時には怒られ、時には褒められ、先生たちと意見を交わします。
さて、ここで気付いた人もいるかもしれませんが、大学院というのはがっつりと「人」がからみまくります。
要するに、研究室にいる人々の人生が費やされるのです。
あまりピンとこない人もいると思うので、ここでは先生たちの立場になって考えてみましょう。
先生たちは、学士や修士、そして博士の学生の面倒を見なければなりません。
日々の研究、学会発表、論文投稿、そして修士論文や博士論文です。
日々の研究はもちろん、学会発表の原稿、発表練習、投稿論文など、すべてに目を通してチェックします。
修士論文や博士論文の場合、100ページ前後のボリュームになることもザラにあります。
この状態で、例えば学生が10人いたとしたらどうでしょう?
先生たちは相当大変なのは想像がつきますよね。
こうなると、大学院入試はどのようにしましょう?
そうです。当然、「優秀な学生に来てもらいたい」となるのです。
また同時に、「素直な学生に来てもらい」と思うことが多いです。
なぜなら、毎日顔を合わせて密な指導をする(しなければならない)学生ですから、
一般的には扱いにくいような人には来てもらいたくありません。
ですので、「どこかとがった知性」や、「飛びぬけた才能」を求めているわけではないのです。
ここまで説明すれば、大学院入試でなぜ同じ大学の学部生が通りやすいのかが分かると思います。
決して彼らが優秀だからという理由ではなく、どのような性格かを把握しているので、良い関係性を構築しやすいのです。
このような意味で、外部から受験する人は少し不利な状況にあるといってよいでしょう。
大学入試まではシステム化されている
大学入試までは、相当精緻にシステム化されているからです。
「人間」がそれほどがっつりからんできません。
例えば、大学入試では、センター試験と二次試験をクリアすれば誰でも平等に大学に入学することができます。
どういうことでしょうか?
大学関係者(教授をはじめとした教員)は、大学に入学する人を自分の意向で選ぶことができないということです。
これによって、先生方に何かデメリットはあるでしょうか?
できるだけ優秀な人や素直な人に、研究室に入ってもらいたいという要望はあります。
しかし、大学に入学した学生の中で自分たちの研究室に配属される人はわずかです。
しかも、入学した時点で研究室を決めている人などほとんどいません。
ここで、先生の立場になってみてください。
要するに、別に誰が入学しようとかまわないですよね?
なにしろ、研究室に配属される学生が大事なわけですから。
そして、現時点では大学入試のシステムも、能力さえあれば誰でも入学できるシステムになっています。
このようなシステムに対して、先生方はたいして不満を抱かないはずです。
これと同様に小学校から高校までを考えてみましょう。
まず、中学と高校はほとんど同じシステムです。
教科ごとに専門の先生が担当するので、先生方が関わる学生の数が圧倒的に多くなります。
一方で、その関わり方というのは、一人ひとりの学生に対しては薄くなります。
少なくとも、四六時中顔を合わせているといったことはありません。
部活動などで他の生徒より深く関わることがあるかもしれませんが、
クラス担任ではない生徒とのかかわりは、分からない問題を質問しにきてそれに答える程度のものです。
それでも、クラス担任を持っている先生の中には、問題児は受け持ちたくないという人もいるでしょう。
しかし、中学も高校も、勉強さえできれば(勉強できなくても)誰でも入れます。
先生たちは生徒を選ぶことができないシステムなのです。
最後に、小学校について考えてみます。
小学校は、クラス担任の先生がすべての科目を受け持つので、児童とは蜜に関わります。
ただし、先生たちは授業をしている時間が多いため、児童が一方的に授業を聞いていることが多くなります。
ですので、実際に先生と児童が一対一で密なコミュニケーションを取ることは大学院に比べると非常に頻度が低いのです。
そして、もちろん小学校は全入ですので、児童を選ぶことはできません。
以上、説明してきましたが、大学入試までと大学院入試までとは明らかに違いますよね。
要するに、大学院以降の社会というものは平等な世界ではないのです。
試験の点数が高い人が選ばれ、企業では難しい資格を持っているひとが出世し、たくさん論文を出版している研究者が出世する「わけではない」のです。
今後みなさんが経験する人生は、多くの場合「人間関係」で決まります。
これまでは、みなさん人間ではなく社会的に構築されたシステムを相手にすることが多かったのです。
一定の手続きさえ踏めば誰もが平等に扱われるという世界はもう終わります。
このような考え方を肝に銘じて、大学院入試の対策を練っていきましょう。
大学院入試でやるべきこと
大学院入試で必ずやるべきことがあります。
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研究室訪問
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過去問を入手する
この二つは、必ず実行してください。
研究室訪問で教授に挨拶をし、できれば教授に気に入られてください。
そこそこマナーに反したことをしなければ気に入られます。
丁寧に研究室見学のお願いをするとか、そのようなちょっとした気遣いが大事です。
この時点から、大学院入試は始まっていると思って間違いないです。
先生たちは、あなたの人間性やマナーを驚くほど真剣に観察しています。
残念ながら、先生方は学生の能力はあまり見ていません。
というのも、人の能力(特に研究遂行能力)を初見で見抜くことはまず不可能だからです。
研究というものは、学力とはほとんど関係がないことも多いです。
頼りなさそうな学生がとてつもない成果を生むこともありますし、その逆もあるからです。
このようなことを言うと、「私はあまり人から好かれない」と思う人もいるかもしれません。
しかし、それはほとんどの場合、思い込みにすぎません。
きっと、今までそのようなイメージが刷り込まれており、そのように振る舞ってきたからです。
もし自信が湧いてこない方は、この本を読んでみると良いです。
きっと自分自身に対する間違ったイメージが払拭されると思います。
それでは検討をいのります!