研究者のキャリアとして,特任教員という雇用形態について説明します。
研究者を目指している方には気になる情報だと思います.
ですが,ネットで記載されている情報はかなり間違いや思い込みが多いので,説明しておきたいと思います.
この記事が決定版になることを願います.
まずはじめに,昔の頭を持っている方に説明します.
助教というのは,昔の「助手」と同じであると思ってください.
さて,それでは説明をはじめます.
現在の大学制度では,教授⇒准教授⇒講師⇒助教⇒研究員という序列になっています.
一般的に,助教までが教員として扱われ,研究員は職員扱いという大学が多いです.
(ただし,例外もあり,研究員も教員扱いとする大学も存在します.)
特任教員とは何か?
はじめに,准教授の説明から行います.
准教授というのは,大学の正規教員であり,大学の運営費から給与が支給されます.
一方で,特任教員は,運営費以外から支給されます.
これが最も大きな違いです.
運営費以外というのは,研究者が獲得した科研費や国から特別に任されたプロジェクトに支払われるお金
などを指します.
そのため,特任教員というのは正規の教員ではないのです.
そして、さらにショッキングなことをお伝えします。
博士号取得後の仕事が少なすぎるという事情から国が用意したのが特任教員という制度なのです。
基本的に特任教員というのは研究員をベースに作られていることがほとんどです。
そう、ポスドクのことです。
この研究員という職位をベースとして、助教や准教授、教授という「称号」が付与されたのが特任教員なのです。
ですから、准教授と特任准教授の間には、絶対的な格差が存在します。
准教授と特任教授では、正規の准教授の方が圧倒的に格上です。
私が独断と偏見で国立大学の教員を格付けするならば、下記のような序列になります。
教授、准教授、特任教授、助教、特任准教授、特任助教という序列になります。
これは、この順に偉いというよりも、この順で「おいしい」ととらえてください。
元来特任教員ははかないポジションですが、特任教授ともなると給料がかなり高いので助教よりは上にしておきました。
特任准教授の意味は?
ここで、特任准教授よりも助教の方がいいの?と思った方もいると思います。
特任准教授の場合、後光が射し込む場合があります。
特に旧帝大などに勤務している場合は、なおさらです。
はっきり言って、この特定教員の捉え方については、教員間でも個人差があるためです。
知り合いの方に、旧帝大の特任准教授を1年務められた方が、近〇大学の正規の准教授になった方がいます。
その方は、情報工学系の研究者ですが、筆頭著者の論文が5本程度しかありません。
近〇大学と言えば、昨今では関関同立に並ぼうとしている西日本屈指の私立大学です。
本来、その程度の業績では、助教程度が妥当のはずです。
はっきり言って、ぼろもうけです。
どの世界でも実力通りではなくチート技が存在します。
このように、一旦特任准教授のポジションについておけば、採用側が偉い人だと勘違いしてくれるケースが結構あるのです。
研究者の世界は、必ずしも研究業績だけで決まるものではないのです。
ですので、最終的に教授まで上りつめたいと考えている方は、助教と特任准教授であれば、後者を選んでおいた方がよいです。
一方で、安定して定年まで勤めあげたいという方は、助教を選んだ方が良いと思います。
大学教員の任期について
多くの国立大学では,正規教員であっても准教授までは任期がある場合がほとんどです.
大学によって5年や10年などの任期が設定されています.
しかし,正規の教員で運営費で予算が確保されているため,普通に勤務していれば任期は更新されます.
一方で,特任助教や特任准教授はそうはいきません.
ところで,例えば特任准教授の「特任」って何だと思いますか?
最も多い勘違いは,「任期」なのですが,真実は「任務」です.
要するに特別の任務(=特別のプロジェクト)のために雇われたポジションのことを言います.
そのため,基本的にプロジェクトが終われば雇用契約も終わるというしくみになっています.
プロジェクトの任期は,様々です.
科研費などでは長くても3年以内という募集が多いですが,潤沢な予算が支給元になっている場合は,任期10年程度のプロジェクトも結構あります.
教員の採用方法
採用方法に関しては,かなりややこしいです.
多くの大学で助教,特任助教,特任研究員と,採用方法はすべて異なることが多いためです.
まず,准教授と特任准教授の採用は,これらは教員扱いとなるため,公募が必須です.
教員採用の際には公平性を重視して,外部に公募することを国が推奨しているためです.
さてここからが問題です.
採用したい人物があらかじめ決定している場合はどうなるでしょうか?
教員採用の場合,「教授会」という教授陣から成る会議が開かれ,その場で審議されます.
ここで,「あらかじめ採用したい人」と「公募で応募してきた人」が比べられます.
基準は,「学位」と「研究業績」そして「当該職務に関する適性」です.
ほとんどのケースで,「公募で応募してきた人」は当て馬であり,これが出来レースというやつです.
特任のポジションの場合は,プロジェクトの責任者(本講座の教授)のひと声で決まることがほとんどです.
なぜなら,特任教員というのは担当プロジェクトに適性が高いという理由を付けやすいため,他の教授陣も
納得してくれることが多いからです.プロジェクトの内容を知っているのは,責任者の教授だけだからです.
一方で,正規の准教授を採用する場合は,本講座の教授以外にもその他の教授にも賛同してもらう必要があります.
大学の運営費が資金源であり,一定の公共性が担保されなければならないからです.
そのため,公募で応募した当て馬の候補者の業績が特別優れていた場合,大逆転が起きる可能性もゼロではありません.
例えば,お気に入りの人が「学士で論文ゼロ」,当て馬の人が「博士で論文50個」等の差があった場合です.
だけど,皆さん分かりますよね?ここは根回しの国,日本です.
他の教授陣も「空気を読んで」,プロジェクトの責任者である教授があらかじめ採用したい人を採用することが多くなります.
准教授と特任准教授などの特任教員になるためには
上記の職種に応募したい方は基本的にJ-RECを使うことをお勧めします.
当て馬をJ-RECで募集することもありますが,コネ採用の場合,大学のHPで短期間(一週間程度)の公募を行います.
採用する側としては,J-RECで公募してしまうと,応募者が多くなって面倒だからです.
例外的に,HPの担当者が休んでいるとか,上げにくい理由がある等でJ-RECで当て馬募集もありえます.
しかし,私の体感的には8割程度が「ガチ公募」だと思います.
皆さん積極的に応募することをおすすめします.
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