博士課程の単位取得退学とは何か?【事実】

「単位取得退学」とか「満期退学」って言葉よく聞きませんか?

実は,これは大学院の博士後期課程を退学した場合の独特のいいまわしです.

大学によって名前が違います.

ブログなどで語っている方がいますが,結構まちがったことを書いていることが多いように思うので正確に説明します.

おそらく博士課程に通ったことがないだけでなく,受験したこともない方が書いているからだと思います。

私は博士課程を修了していますので、一応理解しています。

結論ですが,「博士論文を提出さえすれば博士号が授与される人」であって,「博士課程を退学する人」でもあるということです.

要するに,普通に博士後期課程の修行年限である3年か4年を過ごしただけではなく,「博士号取得のための単位をすべて取得している状態」です.

博士課程の修行年限の中で中間審査が必ずあるので,これをクリアしています.

中間審査というのは、いわゆる順調に学業が進んでいるかどうかを確かめるような一種のテストのようなものです。

普通にだらだらと修業年限を在籍するだけでは,満期退学という扱いにはなりません.

目次

なぜ単位取得退学が起きるのか?

人により様々ですが,主に下記の理由です.

  • ジャーナル論文が学会にアクセプトされない
  • 博士論文自体の執筆が間に合わない
  • 人間関係が悪化した
  • 心変わり

これは人により様々ですが,もっとも良くある理由は,ジャーナル論文がアクセプトされないためです.

一般的に博士号を取得するためには,権威ある学会に論文投稿し,2本程度アクセプトされる必要があります.

厳しい大学の場合,これらがアクセプトされなければ博士号取得のノルマが果たせません.

論文投稿は簡単ではありません.まず先生に投稿を許していただくための説得根回しが必要になりますし,もちろん研究成果が出ている必要があります.

次の理由としては,博士論文自体の執筆が間に合わないため,退学するというパターンです.

一般的に博士論文は「英文で100ページ前後」を執筆する必要があります.

しかも,100ページすべてについて教員に確認してもらい,承認してもらう必要があります.

これに間に合わないということですね.

次に,人間関係(特に教授との)が悪化するパターンです.

これは生物系などの共同作業が必要になるラボ環境に多いようですが,人間関係がこじれるとまず博士号はとれません.

博士号をとるためにはプチ政治力とプチ忖度が必要です.

教員は気に入らない学生を,簡単に排除することが可能です.

これが大学の怖いところです.

一種のパワハラってやつですね.このパワハラはまるでパワハラでないかのごとく実行可能なので,非常にやっかいです.

よほど世界的な研究成果があれば別ですが,ほとんどの研究はどんぐりの背比べなので,簡単に「つぶす」ことが可能です.

後の理由に関しては,もっと魅力的な就職先が見つかったとか,このような理由も結構多いです.

3年も4年も在籍していると人間の考え方というものは結構変わるので,一定の確率で別の道に進みたいと思うようになるケースもあると思います.

単位取得退学と普通の退学の違いは何か?

単位取得退学は,退学後数年以内に博士論文を執筆して大学に提出すれば博士号を与えられます

この場合,大学によっては大学院修了という称号がもらえることもあります.

その場合,退学したあとに修了したということになります

退学してから修了がおかしいって?

ぜんぜんおかしくありませんよ.

学校教育法にも退学したら卒業(修了)できないなんてどこにも書かれていません.

今まで皆さんが体験してきた学校ではそういうしくみが多かっただけです.

それは子供のころから植え込まれてきてしみついた考えです.

もっとフレキシブルに考えてみましょう.

入学とか卒業などの基準は学校が勝手に決めているのでOKです.

現在では、ほとんどの大学で、満期退学後に博士論文を提出すれば、修了することが可能になっており、修了証明書も発行してもらえます。

最後に言っておきますが,普通の退学の場合は,なにも与えられません.

最終学歴はどうなるのか?

履歴書には,「単位取得満期退学」と書いてください。

よく言われるのが学位は修士号しかないのだから,修士までの学歴で良いという人がいます.

しかし,これは間違いです.

なぜなら,そもそも履歴書というのは「学位」を記述する場所ではなく,「学歴」いわゆる「学習歴」を記述する場所だからです.

なので,実際には大学を中退した方であっても,大学で成績証明書に記録が残っている場合は,高校までの学歴だけでなく大学へ入学したことも記載するのが正しい書き方です.

日本は社会通念として「卒業至上主義」で,ドロップアウトを悪とする考え方が植え込まれているので,自然とこのような考え方になる人が多いですね.

もちろん,一般企業では「単位取得満期退学」と履歴書に書くとあまり理解してもらえないこともあると思います.

ですが,そのような企業はあまり優れた企業ではないので,入社しても「ひどいめにあっておわり」かと・・・

一方,研究機関などに応募する場合,修士号を持っているだけの人と「単位取得満期退学」の人は明確に区別され,給料も異なるケースが多いです.

このように,単位取得満期退学というのは研究機関と企業によってその捉え方は様々です.

今回の説明で疑問が払拭された方も多いのではないでしょうか?

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この記事を書いた人

某メーカーで数年間エンジニアとして勤務していました.研究,開発,品質管理とたらい回しの刑を満了し,現在はパッケージソフトウェア開発者として個人で活動しています.

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